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取引の分断とは?過払い金請求の争点を解説

過払い金

2024.04.17

取引の分断は、過払い金返還請求の主要な争点の一つです。過払い金請求を受けた貸金業者は、さまざまな主張をして過払い金の返還を免れようとします。その中でも取引の分断は、特に重要な争点として古くから争われてきました。本記事では、取引の分断とは何か、そして取引の分断が過払い金返還にどのように影響するのかを詳しく解説します。

取引の分断とは

 取引の分断とは、キャッシングのリボ払いなどの取引において、一度完済したあと、しばらく取引をしない期間が続き、その後、再度借り入れが始まる取引のことを過払い金返還請求において「取引の分断」と呼びます。

取引の分断が問題になる理由

取引の分断が問題になるのは、過払い金の計算方法に影響を与えるからです。 ここでは便宜上、完済前までの取引を「第一取引」、完済後に新たに始まった取引を「第二取引」と呼びます。取引の分断の主張とは、第一取引と第二取引を別々の取引であるとして、利息制限法の計算も別々に行うべきであるという主張です。

反対に、過払い金の計算において第一取引と第二取引を連続で計算することを一連計算といいます。一連計算を採用すると、別々で計算した場合に比べて過払い金は多くなります。そのため、貸金業者はこの一連計算を避けるため、取引の分断を主張し、過払い金の額を減らそうとします。

(1)取引の分断が認められると過払い請求は不利になる

取引の分断が認められると、過払い請求は不利になります。 第一取引が完済後10年経過すると、第一取引の過払い金は時効により消滅します。また、第二取引の開始が利息制限法以下の利率であれば、過払い金は発生しません。特に平成22年6月以降は利息制限法以下の利率での取引が一般的となっているため、第二取引が平成22年6月以降に開始された場合、過払い金は発生しません。

第一取引の完済時期と第二取引の借入時期によっては、過払い金が全くないということもあります。

(2)必ずしも取引の分断が認められるというわけではない

取引に空白期間があっても、必ずしも取引の分断が認められるわけではありません。以下のポイントが判断基準となります
・一つの基本契約であるか
・リボ払いのような取引か
・空白期間の長さ

裁判をしない和解交渉について

分断のある取引の過払い金を裁判せずに請求する場合、貸金業者の対応はさまざまです。クレジットカード会社は比較的緩やかですが、一部の業者は分断を主張して和解を難しくします。この場合、裁判を検討する必要があります。

裁判における取引の分断の判断

最高裁は、基本契約が一つの場合と複数の場合の判断基準を示しています。
ここでいう基本契約とは、限度額の範囲内で継続的に借入を繰り返すことができる包括契約のことを指します。リボルビング払いの取引はその典型例です。(ただし、リボルビング払いの取引に限られるわけではありません。)

(1)基本契約が一つの場合の判断基準

最高裁の判決によると、一つの基本契約に基づく取引は、空白期間があっても一連計算されるとしています。最高裁平成19年6月7日判決では、一つの基本契約に基づいて継続的に貸付けが繰り返される金銭消費貸借取引において過払い金が発生した場合、その過払い金を、その時に存在している借入金に充当することはもちろんのこと、その時に借入金が存在しなかった場合でも、その後に発生する新たな借入金に充当する合意があると判示しています。

要約すると、リボ払いの基本契約による取引の場合で過払い金が発生したときは、

その時に借入金があるときは借入金に充当されます。その時に借入金がなく取引に空白期間があるが、その後の借入れにより第二取引が始まった場合は、その第二取引の借入金に充当されます。つまり、第一取引と第二取引との間に取引の空白期間があっても、基本契約が一つであれば、第一取引と第二取引は別々に計算されるのではなく一連で計算されると解釈されるのです。

なお、最高裁は、一つの基本契約において継続的に貸付と返済が繰り返される金銭消費貸借取引であることを要件としており、取引をしていない期間(空白期間)の長さは問題にしていません。しかし、実際に多くの裁判において空白期間の長さの影響は大きいといえます。

(2)基本契約が複数であるの場合の判断基準

複数の基本契約がある場合でも、取引の事情を考慮して一連計算が認められることがあります。最高裁平成20年1月18日判決では、第一取引と第二取引の間に空白期間があり、第二取引の開始時に改めて基本契約が締結されたとしても(つまり、第一取引と第二取引で別々に基本契約が締結された場合)、以下の事情を総合的に考慮して、事実上1個の連続した貸付取引であると判断できる場合は、第一取引の過払い金を第二取引の借入金に充当する合意があると判示しています。

具体的な判断基準としては:

・第一取引の取引期間の長さと空白期間の長さ
・第一取引の契約書を返しているかどうか
・カードを失効しているかどうか
・空白期間に貸金業者が借主に接触しているかどうか(営業の連絡など)
・第二取引の基本契約が締結された事情
・第一取引と第二取引の利率の違いなどの契約内容の変更

最高裁は、取引に分断がある場合の一連計算の判断基準を、基本契約が一つであることとしながら、一方で基本契約が一つでない場合であっても、取引の諸事情を考慮することで事実上1個の取引と判断できる場合は、一連計算を認めています。

(3)実際の裁判での争点

下級審判決では、空白期間が長くても一連計算を認めた例があります。基本契約が一つであることを根拠に、消費者金融の4年の空白期間のある取引に一連計算を認めた判決や、クレジット会社の7年の空白期間のある取引に一連計算を認めた判決が出ています。

しかし、実際の裁判では、空白期間の長さが影響を及ぼすことが多々あります。下級審判決(最高裁ではない裁判所の判決)において、たとえ基本契約が一つの取引であったとしても、裁判官の判断が空白期間の長短に左右されることがあると感じられることがあります。

とはいえ、リボ払いで基本契約が一つの取引については、貸金業者側も判決まで求めることはあまりなく、途中で和解希望の申し出があり解決に至るケースがほとんどです。

※ここでは特に基本契約が一つでリボ払い取引のケースについて説明しています。翌月1回払い取引のケースやリボと1回払いが混在しているケース、貸付停止措置の主張がされているケースや途中で和解をしているケースなどについては、今後説明をしていく予定です

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