夫(妻)に内緒で自己破産を申し立てる方法!家族に知られずに進める手順と注意点
自己破産手続きは家族に内緒で可能か? 家族とはいえ、申立人とは別個の存在です。しかし、インターネット上の情報では、家族に知られずに破産手続きを進めるのは困難だとされています。実際のところ、どうなのでしょうか?この記事では、「配偶者に内緒で自己破産をしたい」と願う方々へ、過去の事例をもとに詳細な解説を行います。
1 配偶者に内緒で借入れする理由
配偶者に内緒で借入れをする理由はいろいろとありますが、返済不能となる方の多くは、以下のような理由をおっしゃられることが多いように思われます。
・結婚前の借金を配偶者に内緒にして結婚したが、妊娠や出産により働けなくなったため返済ができなくなった。
・配偶者から渡される生活費ではとてもやりくりできず、生活費を補うために配偶者に内緒で借入れをした。
・友達に誘われて配偶者に内緒で投資を始めたが損失が大きくなり、それを補填するための借入れを繰り返していたら多重債務者になっていた。
・ゲームやネット占いなどの課金や多額のショッピングなどのために、配偶者に内緒でカードの利用を繰り返した。
・実家より援助を求められたため、配偶者に内緒で金融機関から借入れをして援助したが、実家からの返済が滞るようになった。
・仕事をしていたときには返済能力に問題はないと思って、リボ払いによるカードを利用を繰り返していたが、病気で仕事ができなくなって返済困難となった。
2 配偶者に話せない事情
破産申立て手続きをする場合、同居の家族の協力が必要となることが多く、基本的には家族に事情を説明してもらっていますが、なかなか配偶者に話しをすることが出来ないとおっしゃられる方も一定数いらっしゃいます。
配偶者にバレたくないという方は以下の理由によることが多く見受けられます。
・以前、借金を配偶者に肩代わりしてもらったが、その時に「次に借金をしたときは離婚だ」と言われている。
・配偶者から、渡された生活費は十分であり、それでやりくりできないはずはないと言われている。
・モラルに厳しく、借金に対しとても不寛容である。
・借入れ理由が配偶者に話せない内容である。
3 配偶者に内緒で破産できないといわれるのはなぜ?
家族であっても申立人とは別人格であるはずなのに、なぜバレてしまうのか。
それは以下のような事情によるためです。
1 配偶者の収入証明書や通帳を提出する必要がある
裁判所は家計を同一とする家族の収入証明書、預金通帳の提出を求めているので、これを準備しなければいけません。
これらの書類を配偶者が所持している場合,それを一時的にせよ配偶者から受け取る必要があるため,その理由の説明時に知られてしまうことになります。
ただし、提出するのにあたりその配偶者の承諾は必要ないので、申立人がその書類を管理しており破産申立ての手続きに用意できるのであれば、その配偶者に内緒で申立てすることはできます。
2 申立人のクレジットの利用が出来なくなった
光熱費の支払いをクレジットカードで決済したり,スーパーでの買い物やガソリンスタンドでの決済をクレジットカードで行っている方は多いのではないかと思います。
破産申立てをする場合はすべての債権者を裁判所に届けるため,そのクレジットカードは使えなくなります。
そうすると,今まで買い物の支払いや決済をクレジットカードでしていたのに、突然、現金で支払うことになることで,怪しまれることになり,結果として知られてしまうかもしれません。
3 自動車ローンが残っている申立人名義の車が引き上げられてしまった
通常,自動車ローンを組んで自動車を購入した場合,その自動車の使用者は購入者ですが,所有者はローン会社(または販売会社)になっています。
これを所有権留保といい,ローンの支払いがすべて終わると自動車の所有権はローン会社(または販売会社)から使用者に移ります。
そのため,ローンが残っていない場合、自動車を債権者に引き上げられることはありません。
しかし,ローンが残っている場合に破産手続きを行うと債権者は所有権に基づいてその自動車を引き上げていきます。
そして,自動車が引き上げられることによって,家族に知られてしまうことになります。
なお,自動車ローンが残っていなくても,その自動車に一定額以上の財産価値がある車は、破産財団として処分されることがあるため,この場合も家族に知られてしまうことになります。
※現時点の運用では,国産車で,推定新車価格が300万円以下で初年度登録後7年以上経過した車については無価値と評価されています。また,評価が20万円以下で管財事件とはならない場合も処分される可能性はほとんどありません。
4 申立人の保証人に配偶者がなっている場合、申立人が破産をすることで保証人である配偶者に請求される
申立人が主債務者で配偶者が保証人である場合,主債務者が破産申立てをすると債権者は保証人に請求をするので,保証人である配偶者に知られてしまうことになります。
5 申立人が自宅やその他の財産の所有者となっている場合、ある一定額以上の財産は処分される
申立人名義の自宅や一定額以上の財産がある場合は処分されてしまいます。
自宅を処分されたのであれば出ていかなければいけませんので,当然に知られることになります。
6 配偶者との間に貸し借りがある
破産を申立てる場合,すべての債権者を裁判所に届けなければいけません。それは友人や家族であっても届出を免れることはできません。
また,申立人が誰かにお金を貸しており,まだ返してもらっていない場合は,貸付金という財産として届出なければいけません。
4 絶対に内緒に出来ないのか?
条件がそろえば内緒にできることがあります。
1 無理をした任意整理は破綻する可能性が高い
どうしても配偶者に内緒にしたいという方は、破産ではなく任意整理の手続きを選択されます。
しかし任意整理の場合、それまでの返済総額を減らすことはできますが、任意整理以降5年前後のあいだ支払いを続けていくことになりますので、途中でイレギュラーな事情が起こった場合には返済を続けていくことが困難となります。
また、返済額を無理した場合、支払いが破綻するのは時間の問題となります。
では、絶対に家族に内緒で申立てすることが出来ないのか?というと、条件がそろえば内緒にできることがあります。
次項にて、妻が夫に内緒で破産申立てを行い免責を受けた事例について紹介いたします
2 具体的事例
申立人は夫、子供2人の4人家族で、自宅は夫名義です。夫は正社員、申立人パート勤務をしています。
子供がスポーツ系の能力に秀でていたため、レベルの高いスクールに5年通わせていましたが、スクール代のほかに遠征・合宿などに多額の費用がかかったことが借金が増加してしまいました。
夫はスクールに通わせることに消極的でしたので、多額の費用がかかっていることは話せていません。
夫は、以前に夫の兄弟の借金のために苦労させられたことがあり、借金をすることに非常に嫌悪感をもっています。
そのため多額の借金が知られることで離婚されてしまうと危惧しております。
申立人は夫に知られる可能性のある破産ではなく、夫に内緒でできる任意整理を希望されていました。
しかし、申立人のパート代では任意整理に必要な原資には足らず、無理な任意整理をしても破綻するのは時間の問題でした。
あらためて本人と協議したところ、
・自宅は夫の単独名義で住宅ローンの債務者も夫のみで,車も夫所有。
・夫の通帳、収入証明書は全て申立人が管理しており、書類の提出に支障はない。
・申立人、夫ともに保証人になっていない。
以上を確認し本人と協議したうえで、破産申立て手続きを進めることにしました。
スクールについては浪費(習い事)と判断される可能性もなくはなかったが、そのおかげで進学が出来たことなどを上申していった結果、夫に知られることなく、同時廃止、免責決定に至ることができました。
5 まとめ
今回のケースは、
夫の収入証明書等の書類を準備することができ、お互いに債権債務関係がなく、申立人の財産がなかったことなどの事情が重なったことにより、夫に内緒で出来たと思われます。
しかし、同様のケースであれば必ず配偶者に内緒で申立てできるというものではありません。
まれではありますが、免責後に知れてしまう可能性もあります。
今回のケースも、家族に知られてしまう可能性があることを十分に理解し納得して頂いたうえで、手続きを進めています。
また,内緒で破産手続きができるというためにこの記事を挙げたわけでもありませんし,当事務所であれば内緒で破産申立てができるとお約束できるものでもありません。
当事務所において、家族に内緒での破産申立てを積極的にお勧めしているわけではありませんが,それぞれのご事情を踏まえたうえで対応させていただいております。
破産はしたいが,夫や妻には内緒にしたいので踏みきれていないという方,他の事務所において「事務所の方針で家族に話してからでないと破産手続きは進められない」と言われた方等,気になっていらっしゃる方はご相談ください。
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