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自己破産すると車はどうなる?|残せるケース・失うケース・対応策を司法書士が解説

自己破産

2024.12.17

「自己破産をすると車は必ず失うのか?」――多くの方が最初に抱く不安です。車は通勤や生活に不可欠な財産だからこそ、手放すことになれば大きな打撃になります。

しかし実際には、一定の条件を満たせば車を残せるケースもあります。また、自己破産ではなく任意整理や個人再生を選べば、車を維持できる可能性がさらに高まります。

本記事では、自己破産で車を失う場合・残せる場合の違いを司法書士の視点で整理し、どうしても必要な場合の対処法まで解説します。読み終えれば「自分は車を残せるのか」「失うときにどう備えるべきか」が明確になり、安心して最適な解決策を選べるはずです。

自己破産で車を失うケース・残せるケースの結論

自己破産をしても、車を必ず失うわけではありません。判断基準となるのは、①自動車ローンの有無、②車の査定額(価値)、③生活に不可欠かどうかの3点です。

ローンが残っている場合

多くのローン契約では「所有権留保」が付されており、車検証の所有者欄はローン会社や販売店名義になっています。この場合、自己破産をするとローン会社は所有権を根拠に車を引き揚げるのが原則です。例外として銀行や農協のマイカーローンでは所有権留保が付かないこともありますが、いずれにせよ「価値のある車」は換価処分の対象となりやすい点に注意が必要です。

ローンがない場合

時価が20万円以下なら、自由財産として残せる可能性が高いとされています。さらに、登録から6年以上経過した普通車4年以上経過した軽自動車は「無価値」と扱われ、処分されないケースもあります。もっとも、この基準は全国一律ではなく、管轄裁判所や破産管財人の判断により異なる点を押さえておく必要があります。

査定額が20万円を超える場合

原則として換価処分の対象になりますが、よほどの事情がある場合に限り、通勤・通院・育児など生活維持に不可欠であると裁判所に認められれば、自由財産拡張の申立てで残せる可能性があります。もっとも、これは例外的な運用であり、必ず認められるわけではありません。生活に欠かせないことを客観的資料で丁寧に示す必要があり、ハードルは高いのが実情です。さらに、裁判所や破産管財人によって判断基準に差があるため、地域や事案によって結果が変わる可能性がある点にも注意が必要です。

このように「自己破産=車を必ず失う」ではなく、条件によって結論は大きく変わります。まずは車検証で所有者名義を確認し、ローン残高や査定額を調べることが最初のステップです。そのうえで、任意整理や個人再生といった他の債務整理手続きも含め、生活に最も適した方法を検討するのが現実的です。

自動車ローンがある場合の対処法

自動車ローンが残っている場合、車は原則として手元に残すことはできません。ローン契約では「所有権留保」と呼ばれる仕組みが採用されていることが多く、完済するまで車の名義はローン会社や販売店にあります。そのため、自己破産を申し立てると、車はローン会社に引き揚げられてしまうのが通常です。

もっとも、いくつかの方法で残せる余地もあります。例えば、家族など第三者がローンを一括返済してくれる場合です。ローンが完済されれば所有権が本人に移り、条件次第では車を維持できる可能性が出てきます。
ただし、返済してくれた人に「後で返す」と約束してしまうと、それは新たな借金と見なされ、自己破産の対象に含まれてしまいます。結果としてせっかくの援助が無効となり、さらに免責不許可事由(財産隠しや偏頗弁済と評価されるリスク)に該当する恐れもあります。

また、自己破産ではなく任意整理を選ぶ方法もあります。任意整理は対象とする債務を選べるため、自動車ローンを対象外とすれば返済を続けながら車を維持できます。生活や仕事に車が欠かせない方にとって、現実的な選択肢となり得ます。

なお、銀行や農協のマイカーローンでは所有権留保が付かず、車検証の所有者が最初から本人になっている場合もあります。このケースでは引き揚げはされませんが、車の査定額が高ければ「財産」として換価処分される可能性があるため、注意が必要です。

このように、ローンがある車は原則として自己破産で残せませんが、状況によっては例外もあります。まずは車検証の所有者欄やローン残高を確認し、手続きの選択肢を専門家と相談することが重要です。

自動車ローンがない場合の対処法

自動車ローンがない場合でも、車を必ず残せるわけではありません。ポイントとなるのは査定額生活上の必要性です。

査定額が20万円以下のケース

査定額20万円以下であれば、少なくとも多くの裁判所の運用で換価処分の対象外とされることが多く、自由財産として手元に残せる可能性があります。中古市場で価値がほとんどない古い車や走行距離が長い車は、この基準を満たすケースが少なくありません。ただし、裁判所や破産管財人の判断により運用が異なる場合もあるため、「必ず残せる」とは限らない点に注意が必要です。

「無価値」と判断されるケース

一般的な目安として、国産車で新車登録から6年以上(軽自動車は4年以上)経過した車は、中古市場でほとんど査定額が付かず、実務上は処分の対象外となるケースが多いとされています。もっとも、車種や市場状況によっては価値が残ることもあり、地域によって運用基準が異なるため注意が必要です。

査定額が20万円を超えるケース

査定額が20万円を超える車は、原則として換価処分の対象となり、売却されて債権者への配当に回されます。ただし例外的に、通勤・通院・育児など生活維持に不可欠であると裁判所に認められれば、自由財産拡張の申立てにより残せる可能性もあります。とはいえ、これは非常にハードルが高く、必ず認められるものではありません。

このように、ローンがない場合でも「価値が低ければ残せるが、高額車両は処分の対象」となるのが自己破産の基本です。車をどう扱われるかは地域や裁判所によって判断が分かれるため、専門家へ相談することが大切です。

車がどうしても必要な場合の対応策

自己破産をすると、原則として車は処分されます。とはいえ、生活や仕事に欠かせない方が代替手段を持つ方法はいくつかあります。

① 査定額20万円以下の中古車を一括購入する

20万円以下であれば自由財産として扱われるケースが多く、破産手続き後でも手元に残せる可能性が高いと考えられます。実際、走行距離が長い車や年式の古い軽自動車なら、この基準を満たす車種は少なくありません。

② 家族名義の車を借りる

家族が新たに車を購入し、それを無償で使用させてもらう方法です。購入資金を本人が負担したり、名義のみ家族にする等は「財産隠し」と疑われるリスクがあるため避け、あくまで家族の所有車を借りるという形が安全です。

③ 自由財産拡張の申立てを検討する

通勤や通院のために車が不可欠である事情を裁判所に説明し、残すことを求める方法です。ただし、例外的で認められるハードルは高く、必ず認められるわけではありません。客観的資料(通勤経路の証明や医師の診断書など)を整えたうえで専門家に相談しましょう。

自己破産で車を手放すことになっても、代わりの手段を用意すれば生活に大きな支障は出ません。どの方法が適しているかは、住んでいる地域や生活環境によって変わります。だからこそ、早めに専門家に相談し、自分に合った解決策を選ぶことが安心につながります。

まとめ

  • 自動車ローンが残っている車は、原則として引き揚げ対象
  • ローンがない車でも、査定額が20万円以下や「無価値」と判断されれば手元に残せる可能性がある
  • 20万円を超える車は原則処分対象。ただし生活必需性が認められれば自由財産拡張の申立てで残せる場合もある(例外的でハードルは高い)
  • どうしても必要な場合は、20万円以下の車を一括購入する、家族名義の車を借りるなどの代替手段がある

つまり、自己破産=必ず車を失うわけではありません。ただし判断基準は複雑で、地域や裁判所によっても異なります。

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