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時効援用とは!(返済義務の消滅と注意点)

時効援用

2024.04.10

借金には時効が存在し、時効が成立すると返済義務がなくなる可能性があります。
しかし、時効の援用を行わない限り、請求は止まりません。
多くの方はこの法的メカニズムについて知らず、大きなメリットを逃しています。
この記事では、時効援用を活用して借金から解放される方法を詳しく説明します。

借金が時効によって消滅する可能性

借りたお金は返済しなければならない、これは借金をする場合の大原則です。
しかし、ある条件の下では例外的に返済義務がなくなることがあります。
借金には時効があり、時効期間を過ぎると返済しなくてもよくなるのです。

消費者金融やクレジットカード会社などから個人がお金を借りた場合は5年で時効になります。
借金を返せなくなった場合でも、最後に返済したときから5年が経過すると、返済義務がなくなります。
(債権者によっては10年の場合があります。)

※消滅時効を悪用する目的で、返すつもりがないのに借りた場合、詐欺になる可能性はあります。

返済が滞っている間も遅延損害金が増加していきます。
時効期間を過ぎていような場合は多額の損害金がついていることがほとんどです。
たとえば、100万円借りて20年支払わなかった場合、損害金が300万になり合計400万円を請求されることも。
しかしそのような場合でも時効が成立すると、元金、利息、遅延損害金等を一切支払わなくてもよくなります。

借金を消滅させるには意思表示(援用)すること!

時効が成立しても自動で借金が消えるわけではありません。債権者に対して「時効により借金が消滅したため、支払いを行わない」と明確に伝える必要があります。このプロセスを「消滅時効の援用」と称します。

援用をしなかったために、借金を消滅できなかったケース

Aさんは、貸金業者への支払いを5年以上支払うことができませんでした。しかし、Aさんは、ネットなどの情報源から5年以上支払っていない場合は時効になるとの知識を得ていましたので、特になにもしていませんでした。
そんなある時、Aさんは貸金業者から支払いを求める裁判をおこされてました。それでもAさんは何の対応もしなかったため判決が言い渡されてしまいました。その数か月後、Aさんは給与を差押えられてしまいました。

債権者は消滅時効の期間が過ぎていても普通に請求することが出来ます。一部でも返済してもらうと時効の援用が出来なくなるため、債権者は時効であることを隠して請求してくるのです。当然債権者から「時効だから返済しなくてもいいよ」とは言いません。

Aさんの場合、事前に時効の援用をしているか、または裁判による判決が確定するまでに、時効により債務が消滅していると反論すればよかったのです。

※Aさんの事例は、時効期間経過後に訴えられた裁判の確定判決により差押えを受けたケースです。なお、時効期間経過後の支払督促の場合は時効援用の余地があります。

消滅時効の援用方法

消滅時効の援用は特に決まった方法はありませんので、直接口頭で伝えても、電話で伝えてもかまいません。
しかし、あとで聞いていないと言われたり、債務の承認をしたと言われることもあるので、直接交渉することは避けた方がよいでしょう。
消滅時効を援用をする場合の方法はいろいろありますが、書面にして配達証明付の内容証明郵便でおこなうのが一番確実です。

※「時効なので支払いません」と言うのであれば時効の援用になります。しかし「お金がないので支払えません」と言った場合、支払義務があることを認めているとして債権者から債務の承認にあたると主張される可能性があります。不安がある場合は専門家に相談することをお勧めします。。

債権者によっては消滅時効の期間が10年となることがある

債権者が貸金業者や銀行などの債権の時効期間は5年です。
これに対して、債権者が信用金庫や信用組合、農協、労働金庫、日本学生支援機構などの債権(債務者が個人で事業資金等ではない場合)の時効期間は10年ですので注意が必要です。
※令和2年4月1日以降に発生した債権は5年で時効になります。

判決や差押えで10年に延長される場合がある(時効更新①)

判決が出たり、差押えがされたりすると、時効が10年に延長されてしまいます。
また、債務名義を取られた後に返済をしている場合は最後の返済から10年となります。
債務名義により債権者から強制執行(差押え)を受けた場合、そこから10年延長となります。

主な債務名義

確定判決
和解調書(裁判上で合意)
仮執行宣言付支払督促
調停調書(和解に代わる決定)

時効が更新された例

Bさんは100万円の債務の返済を20年前から返済していなかったため、多額の損害金とあわせて370万円を請求されていました。
Bさんは20年近く返済していなかったのですが、18年前に判決を受け、また9年前には差押えを受けていたため消滅時効の援用をすることは出来ませんでした。

債務の承認により時効が延長される(時効更新②)

債務名義や強制執行等以外にも時効が更新されることがありますが、これを債務の承認といいます。
債務の承認とは、債務者が時効期間が過ぎるまでに、債権者等に対して債権が存在することを認めることです。

債務の承認がされると、時効期間はそこからあらためてスタートすることになります。
たとえば、最後の返済から4年後に債務の承認をした場合、時効が完成するのは、最後の返済から5年後ではなく、債務の承認をした時から5年経過したときになります。

債務の承認となる例

a.借金を支払う
b.返済の書面(和解書等)を交わす
c.返済の約束をする
d.返済の意思があることを伝える。

aとbの場合は時効は更新されます。
cとdの場合、その時の状況によっては、必ずしも債務の承認とはならない場合もありますので、専門家に確認することが望ましいでしょう。

※令和2年の民法改正では、時効の「更新」と「完成猶予」に分けられました。
「更新」されると、時効期間はそこからあらためてスタートすることになります。
または時効の完成が先延ばしにされることを「完成猶予」といいます。

時効完成後の債務の承認

債務者が、消滅時効の期間が過ぎたことを知らずにした債務の承認は、「時効完成後の債務の承認」として扱われるため、債務承認の時点から新たに5年間経過するまでは時効の援用ができなくなります。
この時効完成後の債務の承認については、承認の際に債務者が時効が完成していることを認識している必要はありません。

債務の承認をしないために/突然の請求に注意

債権回収会社からの請求
 
Cさんはあるローン会社から100万円を借り入れていましたが、8年前に失業し、その後返済が不可能になりました。最初の数ヶ月間はローン会社からの請求が続きましたが、その後請求は途絶えました。Cさんはその後再就職し、安定した収入を得るようになりましたが、ローン会社からの請求がなかったため、返済は行われていませんでした。

しかし、突然、Cさんの元には元のローン会社から債権を譲受けたという債権回収会社から、遅延損害金を含めた220万円の支払いを求める請求書が届きました。裁判を起こすという脅し文句も含まれていたため、Cさんは慌てて債権回収会社に連絡しました。
電話での応対は穏やかで、支払い意思の確認ができれば裁判はしないと言われ、損害金の一部を減額する和解案が提案されました。最終的にCさんは180万円を分割払いで返済することに同意しました。

このケースから学ぶべき重要な教訓は、時効期間を過ぎた債権を請求する債権者がしばしば債務の承認を促す手段を用いることです。請求書を送付し、返済の意思を確認することや、損害金の減額を提案することで、債務者に返済を促し、和解を促すことが一般的です。特に債権回収を専門とする法律事務所や債権回収会社は、時効完成後の債権を請求することに熟練しており、言葉巧みに債務の承認をさせようとすることがあります。

長期間返済をしていない債権者や記憶にない債権者からの請求があった場合、落ち着いて対応することが非常に重要です。特に、債権回収と名のつく会社や法律事務所からの請求には注意が必要です。このような場合、迅速に司法書士や弁護士などの専門家に相談することが最善の策と言えます。プロのアドバイスに耳を傾けることで、不必要な支払いや裁判などのリスクを回避し、より良い解決策を見つけることができます。

時効援用の手続き

1.取引履歴の取り寄せ
  最終取引日・更新事由の有無を確認します。

2.時効更新事由があるかどうかの確認
  債権者に問い合わせて、債務名義や債務の承認の有無について確認します。
  援用通知後に確認することもあります。

3.時効援用通知の送付
  配達証明付の内容証明郵便にて時効援用通知を送ります。

4.配達証明書の到達確認

まとめ

一定期間返済をしていなければ、時効により返済義務がなくなる場合があります。
しかし時効の援用をしなければ、請求が続きます。
突然請求を受けて債務の承認をしてしまわないように、事前に時効の援用をしておくこともリスク回避になります。
長期間返済をしていなかった債権者から督促された、
債権回収という会社や法律事務所からの請求があった、
時効かもしれない債務が気になっている、
という方は、司法書士や弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。

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